僕とプーさんのホームランダービー

幼少期、なぜかプーさんがとても好きで、プーさんの人形でよく遊んでいた子供だった。彼とおそろいの赤いTシャツがお気に入りだった。
しかしだんだん成長するにつれプーさんとの接点はなくなり、彼のことを意識することもなくなっていった。

時が過ぎ私は大学生となり、ある年の正月休み、地元に友達も少ない私は実家で特にやることもなくネットの掲示板で正月の過ごし方のスレをぼーっと眺めていたところ「プーさんのホームランダービー」というゲームをして過ごすのがオススメという書き込みがあった。無料のブラウザゲームで、子供向けにもかかわらずすごくやりごたえがあるという話に加え、異様に「プーさん」という字面が懐かしく、久々に彼に触れたいという思いで手を出したのだった。

実際やってみたところ、書き込み通りなんとも非常にやりごたえのあるゲームで、その年の正月休みの暇な時間はこのゲームに費やし何とか全クリすることができた。
クリアの達成感と同時に、長らく会っていなかった旧友と楽しく飲んだようなある種のカタルシスがあった。
こんな名作に会えてよかった、たまたまあの掲示板であの書き込みを見ることができてよかったと感謝しつつ、ゲームの評価でも見ようかとググってみるとなんと罵詈雑言の嵐。「キッズ向けとはなんなのか」「鬼畜ゲー」「ロビン〇ね」などなど、クリアできずに捨て台詞を吐いている人が多いようだった。こういったゲームに文句を言って諦めてしまうような人間は何をやっても中途半端なんだろうなと思いながら、敗者たちのコメントを眺めた。

そんな高難易度キッズ向けゲームプーさんのホームランダービーだが、なんと2020年12月にサービスが終了することとなった。初プレイ以来これまで、このゲームをプレイするたびに私は大学時代の正月休みへタイムスリップすることができたし、これからもそうだと思っていたが、何事にも終わりは訪れることを思い知らされた。
社会人になって6年目になった今、これが最後と思いながら大学時代へ思いを馳せ私はホームランを打つ。

プレイできなくなってしまう前に外出自粛の今、この終わりゆく名作をやってみてはいかがだろうか。



タイトル画面だけで泣けてくる



ここからはそんな素晴らしいゲーム、プーさんのホームランダービーの仕様および各キャラの攻略法について記す。

ゲームとしては、プレイヤーはプーさんを操り100エーカーの森(プーさんの居住地)の住人たちからホームランを打つ野球ゲーム(?)だ。相手キャラによって投げる球種、クリアのためのホームラン数ノルマが異なる。
プーさんは普段「何もしないをする」とのんびり屋発言をしているが実はとんでもないスラッガーであり、そのためノルマも厳しくヒットや見逃しはミスとして扱われ、ホームランを打たなければ意味がない。

マウスをクリックすることでプーさんはバットをスイングするが、一瞬クリックすると「ブンッ」とスイング音だけがして、プーさん本体は一瞬震えるだけである。クリックの一瞬でスイングをし終えており、音だけが取り残される。そのスイングはさながら太刀筋の見えない居合切りの達人のようである。「何もしないをする」というのは何かを極めた達人としての重い言葉なのかもしれない。
そんな感じであまりにスイングが速いため一瞬のクリックだとバットがボールに当たらないので、実際のプレイング的にはスイングをするときはクリックをしてそのまま少しだけ押しっぱなしにする必要がある。フォロースルーが大事。

普通の野球ゲームや何かを打つ、当てるゲームにおいては自キャラのスイングスピードと対象物のスピードを計算したタイミングで行動をするが、このプーさんの異常なスイングスピードによりそういった物理的な考えは不要になる。なんせクリックした瞬間にはスイングを終えているのだから。このため、その速さに慣れるまで全体的に少し早いタイミングでスイングしがちになるので要注意。少し振り遅れるくらいの気持ちだとちょうどいい。
さらに共通的なアドバイスとしては、バットの芯よりも根本寄りで打つと怪力のプーさんと言えども途端に飛距離が伸びなくなる。極力バットの先を意識して打つべし。


さて、各キャラの攻略だが、プレイ中は絶えず穏やかな音楽が流れており(耳コピ済)、パワプロのホームランコンテストばりのゆるやかなスローボールが投げられるかと思いきや、プーさんの打撃力に負けず劣らずのスーパーピッチャー揃いである。森の愉快な仲間たちを打ち崩すのは容易なことではなく、対策が必要である。

Stage1.イーヨー
ノルマ:3/10
おそらくこの森では初心者レベルなのか、速くもない普通のストレートを投げてくる。このレベルの球しか投げられないとこの森でいじめられないか心配になる。
プーさんのスイングが速すぎるため意外にもタイミングが噛み合わないことが多いが、そこにさえ注意すれば問題ない。流し打ちをするイメージでもかなり引っ張り気味の打球となる。
レベル差がありすぎて逆にやられてしまうことは戦いにおいてはよくあることだが、それを痛感させられるステージ。

Stage2.ランピー
ノルマ:5/15
こいつも球は素直なストレート。しかし投げるタイミングが独特のためタイミングを外す可能性がある。まともな野球だったらボーク臭いがここは森の中、審判などいない。
タイミングさえ掴めば剛腕スラッガープーの敵ではない。球速も速くもないので手元に来たタイミングに合わせてクリックさえすれば問題ない。

Stage3.ピグレット
ノルマ:8/20
この森においては割と有名キャラだが割と序盤に現れる。前の2キャラに比べて肩が強く、パワプロ感覚では140km/hくらいの速球を投げてくる。まあプーさんのスイングスピードをもってすれば敵ではないレベルの速さ。
少し嫌なのがコースを少し左右へ散らしてくることであり、先述のように根本で打ってしまうとスタンドまで運べなくなる。これから現れる強敵はバットの根本で打ってるようじゃ勝てないぜということを親友ピグレットが教えてくれるステージである。

Stage4.カンガ&ルー
ノルマ:12/25
メジャーキャラピグレットの後というのもあり「こんなやついたっけ?」という気持ちになる。バウンドを使った投球をしてくるが硬球では考えられないようなボヨンボヨンとしたバウンドをし、バッターへの進行スピードが一定じゃないのが厄介。しかしバウンドしても左右のブレはなく直線的なベクトルなので、落ち着いて手元にきたタイミングでスイングをすれば倒せる。どれだけ事前にバウンドしようが勝負は手元に来た時のみなのだ。

State5.ラビット
ノルマ:15/30
ノルマがついに打率(というかホームラン率).500を要求するようになってくる。そしてこのあたりから完全に球は魔球の域となる。変化球ってレベルじゃない。
このラビットの球は、最初こそとてつもないスローボールだが軌道の途中で急加速して手元へやってくる。しかしこちらも目で追えない速さではまったくなく左右のブレもないので、遅い間にコースを合わせて加速後に手元へ来たタイミングでクリックで簡単に打ち崩すことができる。この程度の魔球ではプーには勝てない。

State6.オウル
ノルマ:19/35
当たり前に半分以上ホームランを要求してくる。そしてここが最初の鬼門である。今までの奴らとはまったくレベルが違う。ここで挫折する人がとても多い。
このフクロウ、なんと左右にジグザグ曲がるボールを投げてくる。バッターの手元に来るまでに左右に7,8往復くらいしており、その横移動が凄まじい速さのためバッティングの瞬間に球がその反復移動のイン寄りなのかアウト寄りなのかは常人には判断が不可能である。したがって、イン寄りのときに振るとバットの根本に当たり凡打になり、アウト寄りのときに振ると届かずに空振りとなる可能性がある。子供向けゲームでそんな無茶な仕様にしてくるのがこのゲームのすごいところだ。
対処としては、多少運が絡むのはしょうがないと割り切って、左右の振れ幅の真ん中にバットの芯を持ってきて、左右のブレを無視しただの直線の球と思ってタイミングを合わせることだけに集中することである。この球のイナズマの軌道はオウルが見せる幻覚であり、実際はただのストレートと思って対応することで私は攻略できた。打ち損じたりすると自分がとっている戦法は間違っているのかと不安になるかもしれないが、そういったときに動じずに自分を信じ続けられるメンタルが対オウルの鍵となる。

Stage7.ティガー
ノルマ:28/40
なんとノルマが7割である。そして投げる球は野球少年誰もが夢見る消える魔球。この消える魔球、一瞬だけ消えるとかそんな甘いものではなく割と序盤に消えてそのまま現れずに終わる。おそらくキャッチャーミットにすら入っていないが見逃すとストライク判定となる。空振りすると本当に飛んできてるのか、そもそも球は投げられていないんじゃないかと疑いたくなってしまう。
この球の恐ろしいところは球速がバラバラなことである。球がティガーの手から離れてかなり序盤で消えるにもかかわらず。一度タイミング間違え空振りなんてしまうと、球が見えないので何が悪くて空振りしたのかもわからず修正が難しく、そのままタイミングを取り戻せず何球も空振りを繰り返すことがザラである。オウルでボロボロになってやっとティガーにたどり着いたもののここで心を折られてしまう者が後を絶たない。
ティガー対策だが、おそらくこれは諸説あると思うが、個人的な対策としてはプーをできるだけバッターボックスの前に移動させて打つことだ。球が消えてからの時間が少なく手元までのタイミングのずれが少なく済むし、横ブレも前にいたほうが少なく済むので打ち損じが少ない。
運要素がオウルと比べてかなり少ないので、慣れるとオウルよりも打てる可能性は高い。

State8.ロビン
ノルマ:40/50
最強のピッチャー。なんと8割をホームランにしなければならない。これまでのキャラは難しい球こそ投げるものの球種は1つしかなかったため対応が可能だったが、ロビンはこれまで戦ってきたキャラの球をどれでも自在に使い分けることができる。しかも緩急やコースも使い分けることができ、テンポ〇も持っているので剛速球を見逃したりなんかするとすぐに次の球が飛んでくる。初速がスローだと「どの変化球だ!?」と身構えるが普通のスローボールだったりしてタイミングが合わなかったりもする。
これまでのキャラで8割打つことも困難だったのにそんな使い分けをされて8割打つというのはかなり厳しく、どうやら頑張ってここまでたどり着いてもここで諦める人がほとんどのようだ。これまで頑張ってきただけにこんなラストはありえないと激昂しロビンを「ロビカス」と罵るプレイヤーも多い。それほどこのロビンはこれまでの強敵が霞むほどに強い。スラムダンクで赤木が河田とマッチアップして神奈川の猛者が赤子に見えると表現したが、まさにそれだ。
私はクリアしたものの、正直対策と言えるほどの対策は存在しない。ロビンのモーションは常に同じだし癖も何もない。とにかく集中すること、それだけである。プレイヤーがゾーンに入っていることがクリアの条件である。残りの球数やこれまでのホームラン数は見るな。目の前の一球一球に集中しろ。これはもうキッズ向けのゲームなんてものではなく、e-sportsだ。

ちなみにロビンを倒しても最後のCGが出てきて回収率が100%になったりはしない。ただ勝って終わる。

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